職場がおうちへやってきた

職場がおうちへやってきた 第3回 - OKIネットワーカーズ誕生秘話

[2009年5月19日掲載]

模索

あらゆる仕事において、その事始めとなるのは事例研究である。他社ではどのような社会貢献に取り組んでいるのか。木村はインターネットをめぐって、さまざまな企業のホームページを開いた。

これといった事例には、なかなか行き当たらない。社会奉仕、または寄付といった活動を行っている会社は多いが、木村の模索する“企業の社会貢献”とは、いくらかかけ離れているような気がした。

そんな折、木村は、資生堂の“身だしなみ講座”を知る。老人ホームに入居しているお年寄りに、メーキャップの指導をするボランティアだ。もう一つ、ジャスコが店舗近隣への植樹を繰り広げる“ふるさとの森づくり”にも興味をひかれた。これらの活動のおもしろい点は、製品開発の参考になったり、販売促進活動になったりと、本来の事業にも役立っていることである。

〈企業のやるべき社会貢献は、事業として行うのが正道ではないか〉

木村は、OKIの製品の中で、社会貢献に活用できるようなものはないかと考えた。社内の資料に目を通しているうちに、“スマートトーク”というテキスト音声変換エンジンを見つけた。OKIは1896年、国産初の直列複式交換機を発表している。電話交換機である。その後もOKIは一世紀に渡って、音声符号化、音声認識などの技術開発を行ってきた。音の技術は、まさにOKIの中核技術だ。その誇るべき技術によって生み出されたものの一つがスマートトークなのである。それを視覚障害者のために役立てることができないだろうか。木村は早速、スマートトークの開発者に話を聞き、ショールームで実際の音声を聞いてみた。

「これはいいぞ、他社よりもクリアな音が出る」

木村は、社会福祉法人日本盲人職能開発センターにスマートトークを持ち込み、ある視覚障害者に、その音声を聞いてもらった。だが、意外にあまり喜ばれなかった。「いい音だとは思うけれど、視覚障害者はどんな音声変換エンジンでも、2、3回も聞けば慣れてしまう。音の良し悪しよりも、どんなところにそれを組み込むか、どう使えるか、そこが問題だ」と。

〈これは、ちょっと違うようだ〉

もっと、手軽にできるところから考えてみるべきかもしれない。会社の中ですぐにとりかかれることは何だろう。誰かのためになること。いや、小さなことから始めてみよう。

最初に手がけたものは“環境にやさしい紙”の推進だった。名刺にはケナフという紙を、コピー用紙には古紙100%・白色度70%という再生紙を使うよう、全社に向けて働きかけをしたのである。

今度は自分から、いろいろに飛び込んでみることにした。果たして、どんな対外ボランティアが社内に受け入れられるのだろうか。社会貢献の啓蒙のため、自分が実験材料になろうと考えたのである。

経団連1%(ワンパーセント)クラブ。経常利益や可処分所得の1%以上を社会貢献活動に支出しようという日本経団連の試みだ。その活動の一つである“体験ボランティア”に企業として参加。港区の企業で組織するボランティアグループ、みなとネット。そのボランティアイベントなどに参加。ハンディキャップを持つ子どもたちを支援するNPO団体、KIDS。そこに呼びかけ、OKIにいる紙飛行機の愛好家と、施設の子どもたちとの紙飛行機大会を企画。

そういった活動に取り組むうちに、木村自身に一定のボランティア観が芽生えることになる。〈ボランティアとは、種類も参加の動機も、活動の仕方も多彩であり、気軽で楽しくできるもの。つらく、負担になるようなものはボランティアとは言えない〉 ……互いに理解し合い、助け合う「場」の提供。それこそが企業の社会貢献としてふさわしいものであることを、木村は確信するのだった。

<次回(2009年6月2日発行)につづく>

サクセスストーリー

OKIワークウェルで活躍するOKIネットワーカーズのメンバーを物語でご紹介します。

  • 視野を広げて
    人とのつながりを大切にする、B氏。 (変形性ジストニー)

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