職場がおうちへやってきた

職場がおうちへやってきた エピローグ

[2009年10月29日掲載]

執筆者メッセージ

OKIネットワーカーズ 土屋竜一

OKIネットワーカーズの本を書きたい……。

これは2006年、私がOKIワークウェルに入社した頃から考えていたことです。在宅勤務社員の形で、重度の身体障害者を30人以上も雇い入れている。しかも、デュシェンヌ型筋ジストロフィーで、人工呼吸器につながれ声も出せない、こんな私のような者まで採用してしまう。このOKIワークウェルの存在を、世に生きる大勢の人に伝えたい。懇親会でOKIネットワーカーズの皆に会って、ますますその思いを強くしました。

かつて私は、“車いすのシンガー・ソングライター”として各地を飛び回っていました。しかし、これからという時に呼吸不全を起こし、歌手生命を絶たれてしまったのです。作曲の仕事は残りましたが、これからをどう生きるべきか思い悩みました。そして見出したのがエッセイの執筆でした。書き溜めたものが出版され、新聞や雑誌の連載などもしました。この経験が役に立つのではないかと思ったわけです。

とはいえ、一新入社員が会社の本を書くなど、おこがましいこと甚だしい。そんなことより、まずは本業です。

高校卒業後、私はワープロをリースで借りて、自宅で仕事を請け負っていました。SOHOの走りだったかもしれません。その後、音楽の仕事や執筆にもパソコンを使ってきたのですが、ITそのものの知識はありませんでした。ですから、IT専門のOKIワークウェルへの就職は、私にとってはまさに転身だったのです。取締役の津田は「ビジネスの基本を身につけるのに、一年はかかる」と言っています。私はあわてず、時期を待つことにしました。会社のことを知るにも、本業がきちんとできるようにならなければ。

2007年の暮れ、私の母親が脳腫瘍に倒れました。余命半年との宣告。ショックに加え、これからの生活への不安にも包まれました。ところが2ヶ月後、母は元気になって帰ってきたのです。しかも、その日から家事や私の介護にも復帰。主治医は「奇跡」と言いました。その頃、会社でスキルアップ面接がありました。事前調査の“やってみたい仕事”という項目に、私は思い切って「OKIワークウェルの本を書きたい」と記入しました。母が家族のために頑張っている。その姿に励まされ、執筆を決意したのです。

この提案は、まさに絶好のタイミングで受け入れられました。OKIワークウェルは2009年に創立5周年を迎えるのです。その記念事業という意味合いで、木村社長から「ぜひ、やりましょう」との言葉をもらったのです。

企画書を提出した上で、まずは全体の構成に臨みました。OKIネットワーカーズの誕生、OKIワークウェル設立までの経緯。ワークウェルコミュニケータの開発。メンバーのサクセス・ストーリー。これらをどう組み立てればよいか、それが課題でした。

また、存在する関連資料のすべてに目を通しました。足りないところは、関係者に直接取材。私は気管切開をしているために発声ができませんので、取材はすべて、設問に文章で答えてもらう形になりました。

満を持し、2008年の8月から執筆に入りました。実はノンフィクションを書くのは初めてのこと。なかなか大変なものがありました。しかし、木村社長や津田、そしてメンバーそれぞれの真摯な生き様に触れ、感動したり感嘆したりしながら、筆を進めることができました。

その後、当社アクセシビリティ・コンサルタントの西田朋己の指導で、推敲を繰り返しました。こうして、この原稿が仕上がったのです

この“職場がおうちへやってきた~OKIネットワーカーズ物語”が、今を生きるチャレンジドの皆さんの就労や自立に、少しでもお役に立てるものになれば嬉しいです。

ページの先頭へ



Pickup Contents

      お問い合わせ

      お問い合わせ