通勤時間はゼロ―。在宅勤務は通勤が難しい重度の障がいのある人にとって、無理なく能力を発揮できる働き方です。
沖電気工業(OKI)の特例子会社(障がい者の働きやすい勤務形態が認められる会社)のOKIワークウェルには自宅を職場にして働く社員が全国22都道府県にいます。この4月にも新人が入り、在宅勤務者は67人になりました。通勤が難しい重度の障がいのある社員が大半で、出社の義務はありません。
在宅勤務は、情報通信技術を用いて、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方です。職場と住居が同じ場所にあるため、外出の準備がいりません。通勤による体力消耗やストレスがなくなります。リラックスして、仕事に集中できます。
特に、重度の障がいのある人にとって自宅であればバリアフリーの環境が整っています。体調面で何が起きても大丈夫という安心感もあります。仕事と生活介護の両立もしやすくなります。周りを気にすることなく、自分に合った姿勢で作業ができます。疲れにくい環境で働くことは、業務の生産性を高めます。
逆にコミュニケーションの面が心配されます。孤独感・疎外感があるとの声を聞きますが、ちょっとした工夫により解決できます。
当社では20年近く在宅勤務を行っていて、働く人が呼び合う声を全員で共有ができる「バーチャルオフィスシステム」を使っています。同じ職場で働く雰囲気を作り、コミュニケーションをとりながら仕事を進めています。孤独感の解消にも役立っています。
厚生労働省によると、民間企業が雇用する障がい者は2021年、前年比3.4%増の約59万8千人でした。実雇用率は2.2%となり、いずれも18年連続で過去最高を更新。雇用は順調に伸びていますが、障がい者が企業の従業員に占める法定雇用率(2.3%)の達成企業は47%にとどまります。OKIでは、現在2.44%となっています。
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本社会全体でも在宅勤務の導入が進みました。情報通信技術のインフラも整う中、在宅勤務という働き方の活用により、障がい者雇用に取り組む企業が一層、増えることを期待しています。