人材育成で心がけてほしい3つの「き」があります。「決めつけない」で「期待して」「鍛える」ことです。この実践が個人の能力を引き出し活躍の場を広げます。
私は多様な人材の活躍について話す機会があるたびに、この3点を紹介します。一つ目は決めつけないことです。会社にいると、上司が部下をおもんばかる気持ちが逆に、本人の可能性を狭めていることがあります。先入観は厄介です。一人一人の思いや意志は本人に確認しなければわからないのに、「こんな無理をさせてはかわいそうだ」と勝手に決めつけている人がいます。まずは決めつけないで、育成したい人と十分にコミュニケーションをとることが大切です。
二つ目は、本人のやる気を確認し、期待していることを言葉で伝え、応援してください。人は期待されると、何とかして期待にこたえようと、自然に頑張ります。様子を見守りながら、時々「調子はどう?頑張っているね。いいね」と、ほほえみながら声を掛けることも忘れないでください。笑顔は相手に「あなたを認めています」と伝えるサインであり、安心感を与えます。自分にできるかどうかと不安に思っている人も、この後押しにより、自信を持って取り組むように変わります。
最後は鍛えることです。最も効果的なのはチャレンジする機会を与えることです。ちょっと難しいことに挑戦する学びの場や新たな役割を与えてください。失敗もあるかもしれませんが、そこから「どうすればよいか」を考えるようになり、多くの学びが得られるはずです。そして、諦めないように、投げ出さないように指導することで、活躍できる人材が育ちます。
最近、「決めつけないで」と言っている私が反省する出来事がありました。当社で軽作業をしている社員の障がい特性を考え、パソコンを使う在宅勤務は難しいと決めつけていました。昨夏、新型コロナウイルス禍が続く中、課長がパソコンの指導を開始。秋に4日間の情報通信技術(ICT)訓練も行い、毎日15分間のタイピング練習を続けた結果、今年2月には2日間程度であれば、在宅勤務ができる程に社員は成長しました。3つの「き」の実践により、活躍の幅が広がったのです。