職場がおうちへやってきた

職場がおうちへやってきた 第9回 - OKIワークウェル創業

[2009年8月18日掲載]

期待

特例子会社、OKIワークウェルの設立に伴い、従業員301名以上の会社を中心とするOKIグループ11社が、グループ適用の認定を受けることになった。なお、2009年3月現在でのグループ適用(全10社)は以下の通りである。沖電気工業株式会社、沖ウィンテック株式会社、株式会社沖ヒューマンネットワーク、沖ソフトウェア株式会社、静岡沖電気株式会社、株式会社沖データ、沖通信システム株式会社、株式会社沖情報システムズ、株式会社沖電気カスタマアドテック、株式会社OKIネットワークス。

“障害者の雇用の促進等に関する法律”が改正され、関連会社と特例子会社の関係が緊密であることなどの条件を満たすことにより、親会社だけでなくグループ適用の対象となる関連会社についても、雇用率算定の通算が可能となったためである。このグループ適用によって、OKIグループでは2004年の6月に、障害者法定雇用率1.8%の達成が実現した。

しかし、グループ適用によって障害者法定雇用率を維持していくには、かなりの努力が必要である。各々の会社で障害者が退職したり採用されたりする状況をウォッチングし、状況によっては新たに雇用をして、常に1.8%を維持するようにしなければならない。木村は、その役目が自身の使命であると考えた。

とにもかくにも、障害者法定雇用率の達成という目標はクリアできた。しかし木村は立ち止まることなく、次のステップに歩を進めるのだった。

木村は、マスコミの取材に対して以下のようなことを述べている。

「障害者を雇用する会社というだけでは、私は満足しません。企業の社会貢献は、その実業の一部として行われるべきです。ただ単に、障害者を雇用して仕事を見つけてやろうというのではなくて、障害者と一緒に、IT技術を使って社会に対していろいろなことをやっていこう、健常者も障害者も幸せに暮らせる社会を作っていこう、そんな仕事をしていきたい。その考えから“チャレンジドとともにe社会®の創造”という、OKIワークウェルの企業理念が生まれたわけです」

どのような仕事を追求するのか……。

「障害を持つ人たちの感性、経験、特性、そういったものを活かした仕事です。OKIネットワーカーズの諸君には、より高度な技術力をつけてもらって、世の中一般のIT企業と太刀打ちできるような仕事を、キチッとやってほしいと思っています」

それを実現させるために、どんな取り組みをしたのか……。

「“事業の種まき”です」

具体的には……。

「技術力と生産力という2つの種をまいたのです。まずは、ウェブの制作会社として、一般の会社と同等か、それ以上の技術力をつけなければなりません。特長を活かした高い技術を持つ集団として、『この分野の仕事はOKIワークウェルに頼めば安心だ』と言われるくらいになりたい」

「それで、それぞれが得意とするスキルを持とうと、コーディネーターとの“スキルアップ面接制度”を設けました。半期ごとに、どんなスキルをアップするかを話し合って、社員がそれに挑戦するのです」

スキルアップの方法は……。

「OKIの研修制度によるeラーニングを活用して、業務に関する様々なITスキルを学んでもらっています。その費用は会社で負担します。また、資格取得も大いに勧めます。多くの社員が情報処理技術者試験や各種ベンダ認定試験に合格していることは、クライアントに向けて、会社全体の技術力を大きくアピールすることになりますから」

事業の種まきの2つ目、生産力については……。

「皆、重度の障害を持っていますから、健常者と同じ労働時間というのでは、どうしても無理が出てしまいます。また、健常者のように残業や徹夜、休日出勤などといったことはさせられません。無理をすれば褥瘡(じょくそう)など、体調を悪化させて、取り返しのつかないことにもなりかねませんから。それをカバーするために、独自の生産システムを組み立てました」

その生産システムとは……。

「当社が独自で開発したグループウェアを中心とするシステムです。時間やスピードを競うのではなく、手戻りのない確実な仕事をすることが肝要です。グループウェアでは、各人の勤務態勢や体調が把握できます。加えて、業務のノウハウといった情報も共有します。これによって、総合的生産力の向上を図ることができるのです」

“事業の種まき”は、実はもう一つあった。在宅勤務者のほかに、視覚障害者や知的障害者を通勤社員として雇用する試みである。

「視覚障害者には、Webアクセシビリティの検証をやってもらっています。実際に使う人間がチェックするのが一番ですから。それによって、肢体障害者の在宅勤務の仕事にも付加価値が出てくるのです。知的障害者の皆さんには、本社事務所に設置した名刺印刷部門で、名刺の作成と印刷をしてもらっています。名刺のレイアウトや似顔絵といったデザインは、在宅勤務の肢体障害者が担当します。つまり、在宅勤務者とのコラボレーションの形で仕事をしているわけです」

肢体障害者だけでなく、さまざまな障害を持った人々にも就労と活躍のチャンスを提供したい。障害者の就業機会の拡大にも貢献しよう、という構えである。

OKIワークウェル取締役社長として、木村が掲げた企業理念“チャレンジドとともにe社会®の創造”。OKIネットワーカーズはその大きな期待に応え、マネージメントのスタッフと共に、誠実で確かな仕事ぶりを見せるのだった。

木村自身もまた、企業ビジョンに掲げた信念に基づく行動を心がけている。木村は、ソーシャル・アントレプレナー(社会起業家、または社会的企業家)としての行動を目指しているという。さまざまな社会問題に取り組むために、ビジネスの中でイノベーティブな、つまり革新的な行動をとる人のことである。

社長やコーディネーターとOKIネットワーカーズによる期待と信頼のキャッチボール。この名バッテリーによって、OKIからはもちろん、外部からの受注をも大幅に増やすこととなった。結果、OKIワークウェルは重度障害者の在宅雇用に取り組むビジネスモデルとして、さまざまな分野で注目される企業となったのである。

<次回(2009年9月1日発行)につづく>

  • 「e社会®」は沖電気工業株式会社の登録商標です。

サクセスストーリー

OKIワークウェルで活躍するOKIネットワーカーズのメンバーを物語でご紹介します。

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